来たる11月1日、大阪市では「大阪都構想」への住民投票が実施されます。
大阪府が「大阪都」へ・・・とお思いの方も多いかもしれませんが、実は「大阪都」は誕生しません。
大阪府はそのまま残り、大阪市が解体され4つの特別区が設置される・・・これが「大阪都構想」の実態です。
今回は、「実はこんなにヤバイ大阪都構想」と題して、「大阪都構想」の問題点を調査していきます。
大阪都構想の概要
まずは大阪都構想の概要から。
大阪府と大阪市によってそれぞれ行われてきた広域行政を一本化するとともに「住民から遠い市役所から、『権限・責任』を住民に身近な区役所に移し、公選区・区議会のもと、地域のことを決定できるようにする」ことを実現させる為に掲げる構想である。
引用元-Wikipedia
従来から議論の対象となっていた、大阪府と大阪市による二重行政を解消するとともに、小さな特別区を設置することで小回りの聞く政治を提供するというのが「大阪都構想」の大まかな概要です。
ちなみに「大阪都構想」を推進しているのが「大阪維新の会」で、現大阪市長の松井一郎氏と大阪府知事の吉村洋文氏はともに大阪維新の会所属です。
2015年に一度「大阪都構想」の住民投票が行われ否決、廃案となっていますが、現市長、現知事がダブル当選したことにより再び動き出すこととなりました。
大阪都構想の問題点
概要だけを聞くと、利便性が上がり良いことしか無い気がする「大阪都構想」ですが、いったいどこが問題なのでしょうか?
- 税収は減るが、コストは増加する
- 住民サービスが低下する恐れがある
- 職員の大半は区域外で勤務
税収は減るが、コストは増加する
「大阪都構想」が実現すると、今まで大阪市が得ていた税収の多くは大阪府に吸い上げられることになります。
なぜ吸い上げられるのか?それは今までは大阪府は府の財源、大阪市は市の財源でそれぞれ賄っていましたが、二重行政の解消に伴い財源も一本化されます。
つまり、一旦大阪府が元大阪市の税収を吸い上げ、それぞれの特別区に分配するという方式に変わるのです。
吸い上げた総額と、振り分けた総額がイコールになればまだ問題無いのでしょうが、間違いなくイコールになることはなく振り分け額の方が少なくなるのは目に見えています。
増加するコスト
税収が減ったとしても、その分コストが抑えられれば上手く回っていくのでしょうが、実際はコストが増加することが懸念されています。
大阪市の説明パンフレットでは、特別区設置の初期コストが241億円、ランニングコストは年30億円かかると明記しています。
しかし、実際のところは新庁舎の建設や、人員の増員などを含めると、当初の15年間の支出増は1300億円とも言われています。
新庁舎は今ある建物をそのまま使えばいいという意見もあると思いますが、現在の「市役所1棟と区役所24棟」の業務を4分割した規模の特別区の業務を処理できる庁舎は現市役所しか無いため、新庁舎の建設は必須だと思われます。
また、人員についても今までは大阪市一括で行なっていたため、スケールメリットが生かされていましたが、4分割することによりスケールメリットがなくなり、職員は4区合計で最低でも330人増やす必要があり、人件費は年間21億円以上も増加すると言われています。
住民サービスが低下する恐れがある
都構想の推進派は「住民サービは維持される」と主張していますが、果たしてどうなんでしょうか?
制度設計を定める特別区設置協定書には、「特別区設置の際」はサービスを「維持するが」、その後はサービス維持に「努める」とあります。
要するに努力目標です。
前述した通り、税収減と支出増により、従来のサービス維持は困難なように思われます。
実際に大阪府と市による財政シミュレーションでは、子育てプラザや市民プールなどの施設を大幅削減すると明記されています。
- 子育てプラザ 24 → 18
- 市民プール 24 → 9
- スポーツセンター 24 → 18
- 老人福祉センター 24 → 18
これを見るだけでも、従来のサービスを維持しているとはとても言い難いです。
職員の大半は区域外で勤務
大阪市を4分割した業務は、既存の24区役所のどこかに集約できる分量ではありません。
そこで大阪市の廃止に伴って次のような庁舎配置となることが決まりました。
・新・淀川区の職員の8割
・新・天王寺区の職員の5割
↓
・区域外の現大阪市役所(合同庁舎)で業務
この状態で、様々な問題に早期対応することができるのでしょうか?
特に淀川区は水害時の浸水予測地域もあるが、現大阪市役所からでは広大な淀川区を渡らなければ区域内にたどり着けない配置となっているので迅速な対応は不可能のように思われる。
「都構想で大阪が成長する」の裏付けは無い
「大阪都構想」の推進派である大阪維新の会は、「都構想により大阪が成長する」と宣伝しているが、その裏付けは無いという。
前述の通り、大阪市を廃止するためのコストは莫大であるため、”浮いた金”で経済を活性化するのは不可能でです。
では何で大阪の経済を活性化・成長させるといのうでしょう?
維新の会が掲げる成長戦略は「カジノ・万博・リゾート・大型開発」につきます。
大阪湾岸の埋立地に世界から集客する、関西空港と直結する鉄道新線(なにわ筋線)、北陸新幹線、リニア新幹線により経済は活性化するといいます。
しかし、これらの成長戦略は「大阪都構想」とは無関係です。
大阪府と大阪市が併存しても万博は決まっていたし、新幹線やリニアも都構想とは関係なく進められています。
この中で「大阪都構想」で実現できるのは「カジノ」だけと言うことになります。
大阪維新の会はカジノ誘致を推進しています。
つまり「大阪都構想」はカジノ誘致のためだけに打ち立てられた可能性もあるわけです。
最後に
「大阪都構想」の問題点について調査しました。
もちろんデメリットだけでなくメリットもあると思います。しかし、現状の様子から見るに「大阪の成長」を掲げる「大阪都構想」は一種のギャンブルに見えてしまいます。
一度消滅した大阪市は二度と戻ってきません。
住民投票で賛成・反対どちらに入れるか迷っている方は、一度立ち止まってじっくり考えてみていただきたいです。
今回は以上です。